F値(絞り値)は、その数値を大きくすればするほど遠くまでピントを合わせることができます。
このため、以前の僕は、全体にしっかりとピントが合った風景写真を撮影するためにはF値は最大にした方がいいと思い込んでいました。
でも、実際はそんなことはありません。今回は、風景写真を撮るのに最適なF値について解説します。
※記事の最終更新日: 2024年9月10日
カメラのF値(絞り値)とは?
F値(絞り値)とは、レンズの焦点距離を有効口径で割った値。簡単に言うと、レンズから光を取り込むための穴の大きさを表す値です。
F値を大きく設定すると(穴を絞って小さくすると)、遠くまで焦点を合わせられますが、レンズから入ってくる光の量が少なくなるので、写真が暗くなります(明るさを維持するにはシャッタースピードを遅くしたりISO感度を上げたりする必要があります)。
逆に、F値を小さく設定すると(穴を開放して大きくすると)、近くにしか焦点が合いませんが(背景や被写体の周囲がぼける)、レンズから入ってくる光の量が多くなるので、写真が明るくなります(速いシャッタースピードや低いISO感度でも明るい写真を撮れます)。
風景写真を撮るのに最適なF値とは?
風景写真は、遠くまで、そして全体にピントを合わせないといけないので、F値(絞り値)を上げれば上げるほど良い(F18~F22など)と考えてしまいがちです。
確かに、F値は上げた方が、精度の高い写真を撮れます。なぜなら、遠くまでピントが合うからです。
また、穴を絞る分、レンズの中央の部分だけを通して光が入るため、レンズの性能を最大限に発揮できます。というのは、レンズというのは構造上、中心よりも周辺の方がどうしても光がぼやけたりゆがんだりしてしまうので、中央部分だけを使うに越したことはないのです。
でも、プロの写真家が撮った風景写真の作例を見ると、多くの場合にF値がF8~11の設定で撮影されています。つまり、そんなにF値を上げずに「中くらいのF値」で撮影しているということです。これは一体なぜなのでしょうか?
なぜなら、F値を上げ過ぎると、光の「回折現象」の影響を強く受けてしまうからです。
回折現象とは、進んでいる光の波動が障害物に遮られた時にその背後に回り込む現象のこと。この現象により、光がレンズの穴を通過する時に波状に周囲に広がり、画像がぼけてしまうのです。
一般的には、F値をF11以上に設定すると回折現象の影響で写真の解像度が低下し始めると言われています。つまり、F値は上げれば上げるほど良いということではないのです。
この回折現象の影響を避けつつ、程良くレンズの穴を絞った、F8~11くらいの設定が風景写真を撮影するにはベストと言えます。
ただ、これは35mm版のフィルムカメラやフィルムとほぼ同じ大きさのセンサーを持つフルサイズのデジタルカメラについて言えることで、APS-Cやマイクロフォーサーズのカメラの場合はもっとF値を下げた方が良いでしょう。
センサーサイズが小さい分、被写体深度が深く、F値を下げても全体的にピントが合いやすいからです(その分、背景をキレイにボカすような写真を撮るのには不利ですが)。
使用レンズにもよりますが、APS-Cの場合はF5.6〜F8.0、マイクロフォーサーズならF4.0〜F5.6くらいが良いのではないかと思います。
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