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写真を見て懐かしい気持ちになる-「ノスタルジー」にはどんな効果があるのか?

昔カメラで撮った写真を眺める

昔撮った写真を眺めると懐かしい気持ちになることがあります。この懐かしい気持ちを感じることを、俗に「ノスタルジー」と呼んだりするが、このノスタルジーは僕らの脳にポジティブな効果をもたらすと言われています。では、具体的には一体どんな効果があるのでしょうか?

※記事の最終更新日: 2023年6月27日

 

ノスタルジーとは?

ノスタルジーとは?

「ノスタルジー」の効果について見る前に、この言葉の歴史を見てみましょう。

 

ノスタルジーはうつ状態と関連付けられていた

 

今は基本的に良い意味で使われることが多い「ノスタルジー(nostalgia)」という言葉は、もともとは医学用語。1688年にスイスの医師のヨハネス・ホーファーが、故郷を離れたスイス人兵士の罹った原因不明の高熱などの病を指して造った言葉です。

 

スイスの兵士たちは、故国を懐かしむ気持ちに悩まされ、ヒステリー発作で泣き叫んだり、不安や動悸、食欲減退、不眠といった症状に苦しんだりしていました。そうした様子をみて、ヨハネスはノスタルジーを精神的な病気の一つであるとみなしていました。今で言う「ホームシック」的なものと捉えていたわけです。

 

1900年代に入ると、精神分析家たちは感傷と共に昔を懐かしむ気持ちになることを「メランコリー(憂鬱)」という病態の一つであると考えるようになりました。この病態は当時「移民精神病」とも呼ばれ、コントロールできない深い悲しみが原因となり「うつ状態」になっていると分析されていました。

 

このように、歴史の中で長い間ノスタルジーはネガティブな意味で使われ、うつ状態と結び付けられていました。

 

ノスタルジーを肯定的に捉えるようになった

 

このノスタルジーの捉えた方に変化が生じたのは、1979年です。アメリカの社会学者のフレッド・デーヴィスが、ノスタルジーという言葉が「温かい」「古き良き時代」「子ども時代」などの肯定的な意味の言葉を人間の脳に連想させることに気がついたのです。

 

2006年には、ノスタルジーがもたらす感情についての調査が行われました。その調査は、イギリスのサウサンプトン大学の心理学者ティム・ヴィルドシャットの研究グループが実施し、その結果、下記のことがわかりました。

 

●人はノスタルジックな情景の中で自分自身を主役に据える。つまり、ノスタルジーは自伝的記憶の一形態である。

●その情景は多くの場合、救済がテーマであったり、克服に至る一連の場面を伴っていたりする。つまり、「悪い経験から始まって最後には良い結果になる」というテーマや場面を伴っていた。

●人がノスタルジックな情景を思い浮かべる時、ほとんどの場合「最初は良かったが最後に悲惨な結果になった」というストーリーには至らない。

 

このように、人がノスタルジーを感じる時、つまり懐かしい気持ちになる時、その心にはポジティブな気持ちが生じていることが多いということがわかってきたのです。

 

ノスタルジーにはどんな効果があるのか?

ノスタルジーにはポジティブな効果がある

では、具体的に言って、ノスタルジーにはどんなポジティブな効果があるのでしょうか?

 

自己肯定感を与えてくれる

 

過去を思い出して懐かしい気持ちになる時、そのエピソードの中では自分が主役になっていることが多いため、それが自己肯定感につながると考えられています。

 

積極的な気分を高めてくれる

 

ノスタルジーを感じる際の思い出は、ポジティブなものに脚色されていることが多いことが研究で明らかになっています。つまり、人は過去を懐かしむ時、前向きになれる、つまり積極的な気持ちになれる場合が多いと考えられます。

 

人とのつながりを認識させてくれる

 

心理学の研究で、ノスタルジーを感じると親しい人たちとの思い出が脳内によみがえるケースが多いことがわかっています。これにより、自分が一人ぼっちでないことを認識し、生きる意味を感じる助けになります。また、対人能力を強化する効果があることも明らかになっています。

 

人生の意味を感じる助けになる

 

過去を懐かしむ時、自分にとって貴重な意味を持つ経験を思い出せることがわかっています。2006年の心理学の研究では、ノスタルジーの程度が高い人ほど、人生の目的を多くあげることができたという報告があります。

 

このように、ノスタルジーにはさまざまなポジティブな効果があるのです。

 

ノスタルジーの注意点

ノスタルジーの注意点

ノスタルジーにどっぷりと浸かってしまうと危険であるという指摘もあります。

 

例えば、それによりネガティブな過去や悲しい思い出をいつまでも引きずってしまうことや、過去を過剰に美化してしまって、昔の世界や自分にしがみつこうとしてしまう、といったマイナスの影響が考えられます。そして、過去に浸るばかりになり、今をきちんと生きられていないということになりかねません。

 

今をしっかり生きているからこそ、時々ノスタルジー感じることが一時の休息のように心地よいものになるのだ、という理解をしておくのが大切なのかもしれませんね。

 

ノスタルジーを感じるために写真を撮り続ける

ノスタルジーを感じるために写真を撮り続ける

僕も、昔撮った写真を眺めて懐かしい気持ちに浸ることがあります。かなり昔に撮影したのに、その時の記憶が鮮明によみがえってくるような写真もあります。

 

「ノスタルジーを感じることができる」。これは写真を撮る醍醐味の一つです。これからも、「カメラで今を撮る」ことを続けていこうと思います。その「今」は将来、「遠い過去」に変わり、ノスタルジーをもたらしてくれるのです。

 

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